かさねる二年目 日村視点
**** 日村視点 **** 子供のころに憧れたのは、物語に登場する華やかな姫君や、彼女を迎えに来る王子様ではなかった。私の視線はいつも、そのふたりの脇にいる──剣と誓いで彼らを守ろうとする、静かな騎士の姿だった。 …
続きを読む →**** 日村視点 **** 子供のころに憧れたのは、物語に登場する華やかな姫君や、彼女を迎えに来る王子様ではなかった。私の視線はいつも、そのふたりの脇にいる──剣と誓いで彼らを守ろうとする、静かな騎士の姿だった。 …
続きを読む →Chapter5 「さんっみぃぃ……!」 約束の土曜日、俺は山奥のキャンプ場に立っていた。 日陰にはまだ雪が残り、冷えた風が容赦なく肌を刺す。吐く息は白く、ふわりと舞い上がって消える。季節の終わりと始まりが、肌の上で混…
続きを読む →Chapter4 バレンタインが、またやって来た。 去年は、その日が何だったのかすら意識の外にあった。でも、今年は違う。あの日、日村に「本命」を予約したこと、その日のことは、今も鮮明に胸の奥にしまい込まれている。 上履…
続きを読む →Chapter3 九月。新学期が始まって、間もなくのことだった。 一人の転校生が教室に現れた。相卜命。占いが得意で、人の“オーラ”が見えるのだと、瞬が言っていた。 女は教室に足を踏み入れるなり、まっすぐこちらへ歩いてき…
続きを読む →* 窪谷須遭難中〜生還後の日村視点 * 遅めの昼食に手を伸ばしながら、何の気なしにテレビをつけた。音がほしいだけ。寂しさを隠すためのささやかな工夫。 けれど、その無防備な沈黙を破ったのは、知らない声だった。妙に硬く、震…
続きを読む →Chapter2 「──ハッ」 目が覚めた瞬間、焼けるような日差しが視界を染めた。どこまでも青い空。肌を刺すような陽射しに、潮の香りが混じって鼻をくすぐる。 足元には、白く乾いた砂──見知らぬ、けれどどこか異様に静かな…
続きを読む →Chapter0 『……来年は、オレにくれねぇか? “本命”チョコ』 『いいよ』 日村がそう返事した時、冗談か本気か分からなかった。けど、あいつは真顔だった。 ……本命。 その響きにずっと、浮かれてる。春にあの…
続きを読む →日村視点。 ◇ 「来年はオレに本命チョコ、くれないか?」 面白いなこの人。って思った。 ◇ 新学期が始まってすぐ、軽音の練習を見に来る人がいた。別に見学者自体は珍しくないし、すぐに辞められるくらいなら、ちゃんと見…
続きを読む →朝、昇降口の空気がいつもと違っていた。 鼻の奥がツンとする。冷たい空気が、どこか甘くざわついている。(……さみぃな) 息を吸うたび、肺の奥まで冷えてくような感覚。澄んだ空気の中に、妙に甘ったるい匂いが混じっていた。 騒…
続きを読む →Chapter3 全校生徒が静かにざわついていた。 誰かが階段の影で「マジで元総長だったらしい」と囁けば、別の誰かが廊下の奥で「黒服三人を片手で投げた」などと盛って伝える。 ──くだらねぇ。 才虎の転校初日に派手に…
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